Lab.

「MIND UNIVERSE」 by SATOH TAKU

アタマLAB. 2015.05.28

「心の揺らぎを可視化する「禅」感覚のデジタルインスタレーション。」

「MIND UNIVERSE」(マインド・ユニバース)は、JINS MEMEで読み取れる人間の「集中度」を活用し、「禅」の世界観を体験できるデジタルインスタレーション。4月には、イタリアで開催された世界最大規模のデザインの祭典「ミラノサローネ」でも出品されました。今回は、監修を務めたグラフィックデザイナーの佐藤卓氏にインタビューし、開発にまつわるエピソードを伺いました。

佐藤卓

「MIND UNIVERSE」とはどんなインスタレーションなのか簡単に教えてください。

人の「心の揺らぎ」をリアルタイムに映像化するインスタレーションです。JINS MEMEで人の「集中度」がわかるという話を聞いて、それは面白いなと思ったんです。人間って自分の状態を意外と自覚出来ないものだから、無意識の自分の状態を体験する場ができれば、新しい試みになるんじゃないかと。

なぜテーマを「禅」にしたのでしょうか?

自分が集中できているかどうか、もしくは無になれているかどうかを試される場はどこか、と突き詰めていった結果、「禅」というキーワードにたどり着きました。禅の世界って、ある意味、自覚出来ない自分と対峙することでもある気がするんです。あと今回、海外でのお披露目ということもあって、日本の文化を感じてもらえるキーワードにしたいという狙いもありました。

「心の揺らぎ」を表現した映像は、何をイメージされて作られたんですか?

僕、波乗りが好きなんですけどね(笑)。サーフィンの波待ちの時、海面を見ちゃうんですよ。美しいなあって。風も波もないときは「凪」という状態で、真っ平らになる。でもちょっと風が吹いただけで、水面はサァーーっと表情を変えるんですよね。その自然が産み出したセンサーとしての水を、心の動きに合わせてみてはどうかなと。それで、海面をテーマにしました。あとは、「あの人波があるね。」なんて、普段の会話でも「波」は心のメタファーになっていたりするので。そういう意味でも海面は面白いなって。

MIND UNIVERSE

海面のデザインで、こだわった部分はどんなところですか?

キーワードが「禅」に決まったので、デザイン言語を限りなく減らし、3Dワイヤーフレームだけで表現したところです。ライゾマティクスさんと話し合って進めながら、海面を見下ろす角度や水平線の動きなんかを僕がオーダーすると、「こんな感じはできそうだ」と返事が来るわけです。そこで僕は「おぉーこれはすごい、これはいい!」って感動して。そんな風に楽しい作業が続きましたね。

映像の中には岩が出てくるんですけど、その岩という動かないものがあるから、波の動きが相対的にわかる。そういうのを考えるのもすごく楽しかったですね。だから、こだわったというよりも、面白くて仕方なかったという感じなんですよ。

初めてJINS MEMEを体験したときの感想を教えてください。

いやぁもう、めちゃめちゃ面白かったですね。驚きました。僕が使ったのは、まだ「心の揺らぎ」とかコンセプトも見つかってない時だったんですけど、右見たり、左見たり、やってみるわけですよね。そうすると見事に反応して。やっぱり、初めての体験ですので、すごい面白いなって。

佐藤卓

今回のようなウェアラブルを使ったプロジェクトは、佐藤さん自身初めてですよね?

もちろん初めてです。最初は自分で大丈夫かなってちょっと不安になりました(笑)。だって話聞いてもわからないでしょ(笑)。メガネで生体情報を調べるなんて。でも、初めてのことや難しいことって大好きなんですよ。どうしてもやってみたくなっちゃう。だから今回も全く未知の世界で最初は驚きましたが、「面白そう!」が勝った感じです。

実際に作品を作ってみて、どうでしたか?

とにかく面白かったです。今回は、短時間で体験していただくエンターテイメント性の高い作品でしたが、たとえば、一年を通して色々な職業の人のデータを取って、比較してみたいと思いました。

例えば、おまわりさんのデータはどういう形を描くのか。レーサーはレースの時だけガーン!と集中力が上がるのか、とか。それだけでも展覧会ができちゃいますよ。さらにそれをビッグデータ化して、みんなで共有して、社会の安全につなげていけるのではないかと思っています。

世の中のウェアラブルデバイスの中で、JINS MEMEの優位性はどこにあると思いますか?

日常に溶け込んでいることですね。プロダクトデザイン一つをとっても、非常に洗練されていて普通のメガネに近い。そこが素晴らしいと思います。やっぱり人って、体験したことのないものを渡されてもすぐに使わなくなって、引き出しの奥にしまっちゃう。だから、メガネというごく当たり前のものの中に、こういったセンサーが入っているのはとても重要なことだと思うし、正しい考え方だと思います。

佐藤卓

今後、JINS MEMEには、どんな可能性があると思いますか?

たとえば、人は常に間違いを犯す動物ですよね。間違いを犯すから事故が起きるわけで。そしてその原因は、もしかすると誰か1人が集中していなかったせいかもしれない。だから、「基本的に人間は自分のことがわからない」ということを知ることが重要で、人為的な事故を減らすためにも、いかに自分のことがわかっていないかを知るツールとして、とても重要だと思いますね。

とにかく、可能性は無限にあって、エンターテインメントの道具として活用するのは、入り口として重要ですけど、それをどう社会化していくかが鍵だと思います。

佐藤卓

佐藤卓 | さとうたく(グラフィックデザイナー、株式会社佐藤卓デザイン事務所 代表)

1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、美術館、博物館等のシンボルマーク等を手掛けるほか、NHK Eテレ「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるなど多岐にわたって活動。