Lab.

あなたの禅レベルを科学的に見る。
春光院からはじまるJINS MEME ZEN マインドフルネス・プログラム

アタマLAB. 2016.11.25

臨済宗妙心寺派・本山塔頭・春光院の川上全龍副住職が監修をつとめた禅の体験プログラム「JINS MEME ZEN マインドフルネス・プログラムin 春光院」が9月5日より正式にスタートしました。このプログラムはJINS MEMEを使用し瞑想時の集中度を計測することで、さらなる集中度の改善に向けたフィードバックを提供するというもの。

かの有名なスティーブ・ジョブズも心酔していたことが、彼の伝記からも知られている「禅」。その思想や概念は世界でも高い注目を浴び、世界的IT企業が名を連ねるシリコンバレーではGoogleを筆頭に多くの企業がこぞって「マインドフルネス」の研修プログラムを取り入れています。

実際に、プログラム監修者の川上全龍さんが副住職を勤める春光院では、年間5,000人以上もの海外からの禅体験者や学術機関関係者を受け入れているそう。

ここまで多くの人が実践する「禅の教え」にはどのような魅力と気づきが隠されているのでしょうか。

そこで今回はJINS MEME とマインドフルネス・プログラムを監修した春光院の川上全龍副住職に、プログラムの詳細と、プログラムがもたらす効果について伺いました。

禅とは「無心」であること

そもそも禅とは何のために行うものなのか、教えていただけますか。

禅という考え方には様々な受け取り方がありますが、禅とは何かを単純に言い換えてしまえば「人はどのようにすれば幸せに生きていけるか?」、「健康に生きていけるか?」といったように、考え方を教えてくれるものだと思います。

そして、禅の基本的な修行の一つが座禅です。座禅とは”調身”=姿勢を整え、”調息”=呼吸を整え、”調心”=心を整える3つの要素からなります。

この座禅という瞑想の行為自体は、精神的に心を落ち着けストレスを減らす行為でもあるんです。心を落ち着けてストレスがなくなれば、人は心のバイアスを使わなくなる。つまり人は偏見を持たなくなり、あるがまま、真実を見ようとするんです。

それは禅でいう無の心、つまり無心にあたります。無心とは何も考えないことではなく、自分だけの価値観で世の中を見るのではなく、リアリティとはどういうものなのかを見ようとすることです。

無心という状態になると、これが善い・悪いという善悪の判断をしなくなり、最終的には苦しみから解放されます。その考え方が禅なのです。

「無心とは、一切愚痴(ぐち)の心なきを言う」——これは鎌倉時代中期の禅僧・蘭渓道隆(らんけい・どうりゅう)の残した言葉。十人十色と言う言葉のように、個々に自分のフィルターを通して世の中を見ています。しかし、価値観とは自身の経験の積み重ねで作られるもので、全てが全て、正しいというわけではないのかもしれないのです。

自分が持つ固定概念を取り払い、フラットな状態で世の中を見るためには、私たちの生活に禅の考え方が必要であると言えるかもしれません。

人が繋がり、生産性を向上させるにはマインドフルネスの考えが必要

最近は書籍も増え、一般的にも言葉を耳にする機会が増えたマインドフルネス。この概念は今後日本で、さらなる発展を見せるでしょうか。

少子高齢化社会に直面している今、労働者の数も年々減っています。そうなればそれぞれの生産性や効率性を上げていく必要がありますよね。いま日本の1番の課題って何でしょうか?世界の幸福度ランキングを見ると先進国の中で下から2番目、全体では53番目。特に一番働き盛りである40〜50代の男性が一番幸せを感じていないと言われており、私はそこに問題を感じています。

人は幸せを感じてる時には、仕事やプライベートが順調に進むじゃないですか。順調だから幸せなんじゃなくて、幸せだからこそ順調にいくんです。成功へ導くには『幸せであること』が絶対に不可欠な要素です。なのに働き盛りの男性が家庭からも職場からもあまり幸せを感じてないということは、生産性や効率性が低いということにつながります。

今は結果と方法論ではなく、「状況」を考えないといけない時期に来ています。そのため人間とはどういうものかをもう一度見直し、理解をすることが全体的なパフォーマンス向上には必要となってきます。そういう意味でマインドフルネスは今後もっと根付いていくでしょう。

マインドフルネスは瞑想がベースになりますが、それだけではありません。例えば、人の話を100%の注意を傾けて聞くことや、コミュニケーション上のアイコンタクトやボディランゲージをちゃんと見ること。そこで本当に人と人がつながるとはどういうことか、考えるんです。

人は独立した存在ではなく、繋がりあい支え合って生きています。それに気づくには、利他的な考え方が重要になる。それを気づかせてくれるのが、マインドフルネスであり、全体を見るという考え方です。

2年前から走り始めていたプログラムの構想

川上さんがJINS MEME を用いたプログラムを監修された経緯について教えてください。

今日はちゃんと集中できていたなって、誰でも感覚的にはわかるんですけど、客観的にはあまりわかってないと思うんですよね。

感覚って続ければ何となくわかってくるものかもしれませんが、そこには自分の思い込みや先入観が入ってくる。その思い込みや先入観がたまってくると逆に集中が出来なくなり、固定概念の渦にはまってしまいます。
それを取り払うには、自分を客観的に見れるものがすごく重要になってくるんですよ。

マインドフルネスについての研究データや論文は現在4,000以上もの数が発表されていますが、それを読んだだけではなかなか「実感」することができないので、人はモヤっとしたまま消化不良を起こすんです。マインドフルネスの研修のプログラムもそうじゃないでしょうか。

そこを科学的にクリアにしてくれるのがこのJINS MEMEです。姿勢や集中度など、心の落ち着きが客観的にデータとして目に見える。「あ、ここで集中度が落ちてるな」とか、「ここでいい集中度を保ってたんだな」とか、いつ自分が集中していたかを、客観的なデータで明確に示してくれるんです。

実際にJINS MEMEの開発担当のジェイアイエヌ・井上氏とこのプログラムについて話を始めたのが2年ほど前からで、アプリ自体は2016年4月13日にリリースしました。それから最終的な「JINS MEME ZEN マインドフルネス・プログラム」という形になったのが同年9月5日です。

結果をもとに改善点についてのフィードバックを行う「マインドフルネス・プログラム」

様々な構想を経てリリースされた「マインドフルネス・プログラム」。その具体的な内容について伺えますか。

はじめに、固定概念とは何か、人間とはどういうものか禅に関する話を20分程度お話しします。それからJINS MEME ZENの紹介をして、実際にJINS MEMEを装着した20分間の瞑想体験をしていただくんです。
体験終了後に集中力の計測データを印刷してお渡ししますので、その結果をもとに改善点についてのフィードバックを行う、というのが全体の流れです。

まずはみなさんの持っている禅に対する固定概念を取り除くことからプログラムは始まります。足を組むこと自体は、床や平らなところに座った時に心地よく座るためのものなので椅子を使ってもらっても構いません。

これは脳科学でも証明されていることですが、呼吸を整えることによって交感神経と副交感神経のバランスを保つことができるんです。
ストレスがたまると呼吸が浅くなりますし、逆に浅い呼吸をしてもストレスがたまる。そうなると交感神経が上がった状態のままになってしまうので、まずはそれを下げるために吐く息を長くして副交感神経を活発化させ、心を安定させるんです。安定した状態というのは、集中もしているけどリラックスした状態にもなっています。

そこで姿勢が悪いと肺も潰れ、呼吸が浅くなってしまいます。だから、姿勢を正すんです。また、背筋を伸ばすことによって脳幹が刺激され、気持ちがシャキッとするんですよ。集中させるためにはこのように緊張とリラックスのバランスを整えることが必要です。

人間は感情を心だけで理解しているのではなく、体全体で経験しています。体はまわりで起きている現象に対して心拍数が上がったり、皮膚や筋肉が緊張したりと、すぐに反応を起こします。それを脳が分析して、自分が今緊張しているのかリラックスしているのかがわかってくるんです。
だから浅い呼吸をしていると脳が勝手に「緊張している」と判断してしまう。それを防ぐために呼吸と姿勢を整えることが重要になってきます。

その状態を可視化しわかりやすくするのが、このJINS MEMEを利用したマインドフルネス・プログラムというわけです。

参加者の瞑想結果を詳細なレポートとして提供。レポートに基づいた改善フィードバックも。

JINS MEMEは第三者目線で答えを教えてくれるもの

今後のJINS MEMEと「マインドフルネス・プログラム」はどのような役割を担い、人にどのような効果を与えてくれるのでしょうか?

一番エネルギーを使っている脳。体重の2~2.4%のほどにも関わらず、1日のカロリーの20~25%を消費しています。昔の人は今のように食べ物がいつでも摂れるわけではなかった。だからエネルギーを極力抑えるために固定概念や習慣を作ってきたんです。しかし、今の世の中ではそれは通用しません。

いま社会は、どんどん変わりつつありますよね。国際化についてもそうですし、テクノロジーの世界なんか3ヶ月が1年分の価値を持っていたりします。自分だけの固定概念や習慣に縛られすぎていると、変化が加速していく今の世の中に追いつくことができません。それをなくすために瞑想は重要になってきます。

JINS MEMEは第三者目線で答えを教えてくれるもの。利用しながら、自分はどういう価値観や固定概念を持ってモノを見ているのか、それを常に自分自身に問うことが大事です。
そして自分の調子を高めるルーティンを持ち、自分で高めて自分の状態を知る。テストで100点を取る感覚でJINS MEMEを使ってもいいかもしれません。

これからは感情と自己認知が必要なスキルになってくる。「How to」を教えるのはもう時代遅れです。それってインターネット上で調べればすぐに答えが出ることじゃないですか。
今後は人間としてのコミュニケーションや感情のコントロールといった能力が重視されるようになってきますし、その能力に長けた人が世界でも勝負できるようになる。そのスキルを鍛えることができるのがこの「マインドフルネス・プログラム」です。

そして、JINS MEME自体は最終的に「自分を導いていくための道具」になるんじゃないでしょうか。

京都からJINS MEMEを広げていく

2016年8月20日にオープンしたJINS初のコンセプトショップとなる京都寺町通店

京都の寺町にJINS初のコンセプトショップとなる新店舗が8月20日にオープン。洗練されたデザインの店舗内の一画には、JINS MEMEのコーナーが設置されています。京都寺町通店から発信するJINS MEMEにはどういった意味があるのでしょうか?

海外から見た日本といえば東京、テクノロジー、ビジネスというイメージが強いと思うんです。でも長い歴史の中で、文化とか精神的な面でリードをしてきたのは京都ではないでしょうか。文化庁が移ったこともそういう意図があってのことだと思いますし、もう一度「京都」という場所が何らかの役割を担うべきなのだと思います。

JINS MEMEのような新しいテクノロジーと伝統って相反するもののように見えますよね。でも、人間の歴史ってずっと一つの直線の上で作られてきたものだし、JINS MEMEもその流れに沿って生まれてきたものだと思うんです。

JINS 京都寺町通店内にあるJINS MEMEコーナー。

1940年以降に日本の禅とか仏教の考え方が海外に移り、それが色んな形で研究されて広がっているのが今のマインドフルネス。
じゃあ、その基点ってどこだっけ? そう考えた時に、答えはやっぱり京都じゃないかって。

JINS MEMEは人間の精神面を覗くことのできるデバイス。ただ”新しいもの”ってだけで終わらせるのではなく、ここから文化や社会に貢献するものとして、さらに発展させていきたいと考えています。」

深く色濃い京都の歴史や文化が今のJINS MEME「マインドフルネス・プログラム」の原型となり、さらに発展していく。
私たちは京都という場所で今までのない経験と、歴史がはじまる瞬間を目の当たりにすることでしょう。

(写真:東原昇平 / 企画構成・編集:東京通信社)

JINS MEME ZEN マインドフルネス・プログラム in 春光院について詳しくはこちら

川上(全龍)隆史

川上(全龍)隆史

宗教法人 春光院 副住職 
妙心寺春光院副住職、マインドフルネス講師。
2004年米国アリゾナ州立大学・宗教学科卒業。06年に春光院にて訪日観光客を対象に英語での座禅会をはじめる。08年より米日財団日米リーダーシップ・プログラムのメンバー。12年よりトヨタ自動車にておもてなし研修の講師を務める。16年にSIYLiのSIY Engage Programを修了。
現在ではハーバード、MITなどのビジネススクールの学生、グローバル企業のCEOを含む年5000人に禅の指導を行うほか、春光院での同性婚支援など、LGBT問題にも取り組んでいる。