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JINS MEMEの目指す未来とウェアラブルの今後

REPORT 2015.11.05

11月5日に発売がスタートしたJINS MEME。その初日、表参道にあるJINS MEME Flagship Store 原宿で識者が集うトークショーがあるというので行ってきました。

JINS MEMEには3点式眼電位センサー、加速度センサーとジャイロセンサーを備えた「JINS MEME ES」と、加速度センサー&ジャイロセンサーが搭載されたスポーツ用の「JINS MEME MT」の2モデルがありますが、人気なのは圧倒的にフル機能版の「JINS MEME ES」なんですって。

お店の中は、完全にJINS MEME一色に。自由に試着できる複数の展示モデルが用意されており、かけ心地やアプリでの計測結果を見て楽しむことができます。

壁一面のディスプレイミラーがまた凄い! 普段はJINS MEMEのPVが表示されているのですが…。

JINS MEMEをかけると映像が消え、ミラーとしての役割を取り戻します。JINS MEMEをトリガーにしてさまざまなアクションが行えるんですね。

また制限時間内にゴルフボールまたはトランプを使った集中力を測れるゲームも。難易度は高いのですが、これはハイスコアがとれるまで、何度でもチャレンジしたくなりますよ。

さて、トークショーのお時間となりました。会場は満員御礼で、JINS MEMEへの期待度の高さがうかがえます。モデレーターはジェイアイエヌR&D室の一戸晋さん。ゲストはJINS MEMEのデザイン監修を手がけたカー&プロダクトデザイナーの和田智さん、東京大学大学院・情報理工学研究科システム情報学専攻教授の稲見昌彦さん、国内外の最新TECHの話題をお届けしているWIRED編集長の若林恵さん、そしてJINE MEMEの開発を担当されたジェイアイエヌの井上一鷹さんの4名です。

JINS MEMEはいかにして生まれたのか

まずは2013年時点の開発モデルから公開されました。シースルーなクリアフレームですが、形状はウェリントン。片側のテンプルに加速度センサーとジャイロセンサーとバッテリーが入っていることがわかります。一戸さんいわく、社内では始まりのフレームということで「アダム」と呼ばれていたとか。

また2014年に公開されたバージョンと、この度発売されたバージョンとは、テンプルの部分が大きく違います。まず耳のところにあった電極を排除し、眼電位を検出しやすくしたそうです。センシングの精度の向上、そしてバッテリーの稼働時間も8時間から24時間と大幅にアップ。メガネ全体として見るとあまり変わっていないように感じましたが、これはもう別物といっていいでしょう。

ところで、JINS MEME ESはなぜベーシックなウエリントンデザインとなったのでしょうか。

「この国には“デザイナーは未来的で新しいことが正義”という1つの流れがあるのです」という和田さん。デザイン学の教育においても、その傾向があるそうです。

「新しいコトが人間のことを幸せにしてくれるかというのを疑問に思える。多分そういう時代がきています。アメリカや日本は新しいことに対してすごく貪欲なのですが、今の時代って、もっとリアルに人の幸せを考えると、むしろ未来的なものよりも、今まで封印していたクラシズムというか、感覚の美と先進的な技術をドッキングさせるかをいう意味もあり、デザインに関しては新しさはいらないなと思った」(和田さん)

「JINS MEMEは5年前から開発していたのですけど、デザインをつめていく段階のとき、当時アイウエアとして流行っていたのがGoogle Glassだったんですね。ああいうデザインをセンセーショナルに打ち出されていたので、我々もデザインをどっちの方向にむけるべきか考えていたんですよ。先進的な、見たこともないデザインにするべきなのかなと悩んでいたりして。しかし和田さんは「ぜったいに違う」と仰られて」(井上さん)

「車のデザインにも関係するところなのですけど、そろそろ未来的な車っていま飽きているなと。味わいのある、カタチをもったもののほうが今の生活にはあうんじゃないかなと思いました。だからJINSさんは普通がいいんですよと言って」(和田さん)

誰もが使うもの、ゆえにユニバーサルデザインの文脈で王道のスタイルを取り入れたのかと思っていたら、最初は様々なアイディアがあったのですね。

「新しさで驚かせるというのが、たぶんこの5年くらいで変わっていくと思うんですね」というのは若林さん。

「今後、よりデザインはテクノロジーの部分を隠していくというか、それが背後に隠れているという形で見せていくんだろうなと思っていて。そういう意味ではとてもいいなと感じました」(若林さん)

アダムフレームの段階から研究を行ってきた稲見さん曰く「これでウェアラブルが始まるかもしれない、という印象を抱きました。これまで、今までの多くのウェアラブル機器は電気系または光学メーカーが開発をしていました。それがメガネを作っているメーカーが本気で作ったときに、皆が使うモノになるのではと」。稲見さんは学生時代には眼球の動きでラケットを動かすブロック崩しゲームを作るなど、古くからの眼電位の研究家。なおそのゲームに関しては逸話がありました。

「究極のゲームはどういうものかと考えたとき、指で操作するのではなくて、目でボールを追いかけ、その動きに合わせてラケットを動かせばぜったいに負けないという視点だったのですが、実際にはものすごく目が疲れるという」(稲見さん)

何が違う、JINS MEMEとこれまでのウェアラブル

ここで初めて知りました。ウェアラブルのコンセプトって、実は70年前からあるんですって!

「ウェアラブルと言われていたものが、ようやくスマートウェアになる感覚がありますね。ウェアラブルってコンセプトとしては1945年くらいからあるのですが、それがなかなか世に出てこないし、新しいテクノロジーガジェットが出てきたとしてもLEDがピカピカしているような。それってハレの場で使うものなんですよね。日常で使うものでは難しい。だからこそJINS MEMEが出てきたときに流れが変わるのかなと思いました」(稲見さん)

写真はMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの、当時のメンバーたち。彼らは高校生のころから身体にカメラをつけていたスーパーギーグでいわばレジェンド。中にはウェアラブルの国際規格を立ち上げたメンバーもいます。

「あまりにもコンピューターが好きすぎて、従来はパーソナル、ポータブルだったものをどう装着していくかというのが彼らのコンセプトだったんです。普段歩きながらでもコンピューターが使えれば幸せじゃないか、という。メガネ型のデバイスはその後Google Glassなどに進化していきました。私も研究用にもっているのですが、家族から「一緒に電車にのるときにはつけないでね。やめてね」といわれています」(稲見さん)

ここはほんと胸にストンと落ちたところ。和田さんの最初のプレゼンテーションのテーマは“スーパーシンプル”だったそうですが、確かに、奇をてらいすぎると一部のユーザーばかりが飛びついてしまって、普遍的な存在にはならないのかもしれません。僕自身、コレはコレでかっこいいと思う世代ですけど、誰もが当たり前のように装着している未来は確かに考えられないんですよね。たとえ、それが機能的に素晴らしいものでも。

「今回のケースでいうとデザイナーがデザインをしない、我慢をするというデザインなわけですよ。デザイナーというのは依頼されたり、ある1つのモチベーションのなかでいえば本来は思いっきりデザインをしたいんですよ。でも時代がかわってきた。たとえばGoogle Glassとか、メガネ型のウェアラブルは各社からいろいろでているのですが、モダニズムのなかでの新しさを追ったものになっている。その結果、どれだけ広がったかというと、広がらなかったんですよね。Google Glassは素晴らしいデザインだと思いますよ。ただ、正直“やった”と思いました。Googleがあっちにいったことで、メガネメーカーとしての僕らの方向性は大丈夫だと確信できました」(和田さん)

ところで一戸さん曰く「JINSはIT企業になるんですかとよく聞かれます」とのこと。

「別にIT企業になろうということを目標に進めてきたわけではないんですよ。基本、メガネができること、メガネをかけることで今の生活がちょっとだけよくなるということを説明していきたいと」(井上さん)

その1つが大ブームを作った、ブルーライトカットレンズを使ったJINS PCであり、今回のJINS MEMEなのでしょう。

JINS MEMEでウェアラブルはどう進化するか

「いままでのプロダクツはモニターを目のところにもってくるという情報デバイスなんですよ。情報をより近くで受け取るものなんですが、あまり必然性はなかったんですよ。身体の中を見るデバイスであるJINS MEMEがなるほどと思ったのは、身体にちかいところにあるという必然性があるなと。身体というのは動的なエコシステムとして動いているんです、という話がでてきたとき重要なのは治療ではなくメンテナンスだと思うんですね。それは現在注目されている予防医学と合致している。例えばアップルのティム・クックは、アップルウォッチのことをスマホの延長線にある情報デバイスでありつつ、ヘルスデバイスにしようという意図を明確もっているはず。ウェアラブルは確実にそっちの、モニターの流れになっていくと思う。なので、僕はJINSがIT企業になるという印象はなく、むしろヘルスケア企業になろうとしているのかなと感じたんです」(若林さん)

「東北大の川島先生も仰ってくださったんですよ。彼の研究テーマが認知症なんですね。認知症ってそうなったか、なっていないかの二元論でしか判断できない。なぜかといえば身体の状態も精神の状態も指標化できていないんですね。しかし川島先生は患者さんをみたときに、目の動きを見るんだそうです。そして「この人はそろそろ発症するかも」というのを暗黙的にわかるそうなんです。つまり病院にきたときだけ測るのではなく、普段から測ってくことができれば、認知症になる何段階目だとかがちゃんとわかるんですよ。そこにメジャーを持つというのは人類が進化するためには必要。だからこそ我々として考えているのは、先制医療という予防学的な切り口は必要かなと。サイフが入り、鍵が入り、すべての機能がスマホでできるようになったのに、あえてもう1つデバイスを身につけてもらう行為をするとしたら、人が死ぬか生きるかというところに関与していかないと、本当の、全員がずっとかけ続ける世界にはならないかなって。そういう世界に食い込んでいきたいです。それは社会をよくすることだし」(井上さん)

メガネって、実はパンツの次につけている時間が長いと言われることもあるほど、必要な人にとってはなくてはならない存在です。では本来、メガネを必要としていない人にとってもずっとつけてもらうようにするには。確かに医療用途では様々なシーンで活躍しそう。目の動きと身体のバランスでさらにどんな身体の声を可視化してくれるのか、さらに楽しみになってきました!

ライター:<br>武者良太(むしゃ・りょうた)

ライター:
武者良太(むしゃ・りょうた)

最新ITやデジタルガジェット、オーディオを追い続けているフリーライター。『Kotaku Japan』元編集長で、現在はウェブ『ギズモー ド・ジャパン』『WIRED』 『IGNITE』、雑誌『モノ・マガジン』『GQ』『デジモノステーション』などに寄稿。メガネ歴33年。

一(いち)JINS MEMEファンの視点から、JINS MEMEの隠された魅力や機能を検証&レポートして行きます!