Lab.

負けないココロを支えるカラダ
e-Sportsプレイヤーときどの集中力トレーニング

カラダLAB. 2017.05.29

ゲームの腕を競い合うe-Sports、そしてそのフィールドに立つプロゲーマー。アメリカを中心として、e-Sportsは世界でプロスポーツとして認知されつつあります。米国では、2013年に初めてプロゲーマーにアスリートビザを発行し、日本でも2016年3月30日に初めてアスリートビザ(興業ビザ基準省令3号)が発行されました。

この歴史的な出来事に対し、日本eスポーツ連盟は「プロゲーマーが他のスポーツ選手と同様、公共的にプロスポーツ選手と認められた歴史的な出来事」とコメント。

プロのアスリートがたった数分の試合へ注ぐ精神力と集中力、競技中に戦うための体力と体幹力。これはe-Sportsプレイヤーにも同じく、必要不可欠なものではないだろうか……?

そこで国内外で活躍しているe-Sportsプレイヤーのときどさん(以下敬称略)に、高い集中力とそのココロを支えるカラダを作るための特別なトレーニングを行ってもらい、JINS MEMEでその前後のデータを計測しました。このトレーニングを行うことで、ときどにどんな変化が見られるでしょうか…?

集中を高めるカラダのトレーニングとは…?

 

まずは、今回指導をいただく齊藤邦秀トレーナー(以下齊藤)に、集中力を高める体幹トレーニングとは何かを伺いました。

 

齊藤:今回は集中力を高めることに注力し、『不安定な中でバランスを取ってキープする』、バスケットボールやサッカー、テニスなどの球技にも取り入れている『ボールに対して素早く反応する』という2軸でトレーニングを行います。人間の体を制御している脳と脊髄という中枢神経系、まずその処理能力を高めていきましょう。筋肉をつけるトレーニングとは違い、「いかに身体をコントロールするか?」ということが重要になってきます。

 

ときど:試合中に相手からプレッシャーをかけられて、ついついココロが不安定になってしまうことがあるんです。アタマではわかっていても、どうしても冷静さを失ってしまって。このトレーニングを受けることで、今後そんな状況下に置かれた時、安定したココロですばやく正解を見出せるようになるんじゃないかと思っています。

 

齊藤:格闘ゲームは自分のペースだけではなく、対戦相手がどう行動するかによって、次の自分の行動も左右されるもの。そのため『相手の動きを読んで瞬時にアタマとカラダを反応させる』ことが必要です。それでは早速トレーニングを始めてみましょう!

 

いざトレーニング開始!

 

トレーニングは、①ストレッチ、②重心トレーニング、③反射トレーニングの3つを実施。まずはウォームアップのストレッチから。人間の体にある関節は、可動域を広げたほうがいいものと安定性を高めたほうがいいものの2つに分けられます。ワールドグレイテストストレッチと呼ばれるこのストレッチは各関節を最適化するための最強のストレッチ。

 

 

序盤からなかなかハード。ワンセットを10回続けるそうですが、普通だったらこの時点でヘトヘトになりそう。

 

ときど:これはなかなきてるぞ…。

 

次はバランスをキープする重心トレーニング。重心位置がどこにあるかを意識してバランスボールに乗ります。重心が両手両足の間にあることがポイントです。

 

齊藤:決して力まず、呼吸をしっかり。力を抜くことで、重心が少し遊んだとしてもバランスを崩さなくなります。慣れてきたら重心を移動してみたりして、自分の重心がどこにあるか意識してみましょう。

 

バランスボールの上に座ってみたり…。

 

片足でバランスをとってみたり。

 

齊藤:体幹トレーニングの基礎は『呼吸を意識すること』。呼吸をすることで余計な力が抜けて、インナーマッスルと呼ばれる筋肉を鍛えることができるんです。

 

次にボールを使った反射トレーニング。手に膝を当て、相手をしっかり見ます。

 

そして落ちるボールをキャッチ。

なかなか余裕の表情を見せています。

齊藤:視覚と聴覚をうまくミックスしてトレーニングすることで、選択反応がより早くなりますよ。

ときど:これに近いトレーニングは普段からやっているんですが、音と体を一緒に反応させるのってなかなか難しいですよね。相手からフェイントをかけられる時も多いので、その行動を見抜いて判断をより速くするためにも、いい練習になりそうです。

トレーニング前後で気づいたこと

 

今回のトレーニングで、ときどはどのような“気づき”を得られたでしょうか?

 

ときど:筋トレ自体は普段から自分でも行っているんですが、トレーニングを終えた後の疲れ方が全然違いますね。まさに『バランス感覚』を鍛えているという感じ。

齊藤:反復練習をしながら『良い癖』を体に身につけることが大事。ただルーチン化するんじゃなくて、質を上げていくことを意識しましょう。

体の癖は無意識に出てきてしまうものですが、それを書き換えてあげるには3,000〜5,000回の反復が必要です。運動の再学習と言われているんですが、昔から野球の千本ノックってあるじゃないですか。あれは、回数をこなして疲れてきても体を動かすことで型を刷り込ませていくというのが狙いだったんじゃないかと思います。

疲れてくると力んだ動きはできなくなり、自然と力が抜けますよね。言われなくても自然とできるよう、それこそいい癖が体に染みつくんです。今回のトレーニングも同様で、続けることでそうなってきますよ。無駄な動きをしないことで然るべき瞬間に動くことができ、長時間の対戦でもカラダが安定していきます。

 

ときど:練習はいつも考えながら行っていますが、本番はなるべく頭で考えずに自分のベストな状態を出せればいいなと思っています。

大きい大会になると賞金の額も大きいし、『大丈夫だ』って口では言っていても実際震えちゃったりするんですよ。そんな時でも普段通りの自分のままで、ココロの安定を保ちながら戦いたい。そのココロを支えるためにも今回のトレーニングを続けて、どんな状況でも慌てず肩の力を抜いた状態で対戦できる自分に持っていきたいと思います。

 

トレーニング後のときどは、完全なるアスリートの眼をしていました。その瞳の奥からは熱き闘志がみなぎり、今後舞台の上で華々しく活躍する彼の姿を想像させてくれます。

トレーニングをさらに積み重ね、見るものをあっと言わせる集中力とパフォーマンスを展開してくれることでしょう。

ときど

プロゲーマー

1985年沖縄県那覇市生まれ。プロゲーマー。本名・谷口一(たにぐち・はじめ)。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学教養学部理科Ⅰ類入学。東京大学工学部マテリアル工学科に進学、卒業。同大学院工学系研究科マテリアル工学専攻中退。2010年、日本で二人目となる格闘ゲームのプロデビュー。理論に裏付けされたセットプレイの構築を得意とし、複数のゲームタイトルで活躍する。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。大会実績として、World Game Cup 2013優勝、EVO2013準優勝、Id Global Tournament 2014優勝など。TOPANGA所属。

齊藤邦秀

ウェルネススポーツ代表

東京学芸大学教育学部生涯スポーツ専攻卒業。学生時代からトレーナー活動を始め、陸上競技選手をサポートする。卒業後、様々なスポーツ選手・チーム、芸能人・文化人のトレーナーとして活躍。2004年に独立しWellnessSportsを設立。陸上競技経験とトレーナー経験(スポーツ医科学)を融合した指導を展開している。