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集中の質を捉える:ベテラン職人と中堅職人の違い

アタマLAB. 2017.05.29

100年の伝統を継承する職人の集中を捉える

世界中の人々を引きつけてやまない日本の"ものづくり"。その高い品質を支える根底には、言語化することのできない職人精神(クラフトマンシップ)が存在します。

今回JINS MEMEでは、創業明治8年(西暦1875年)、京都にある手作り茶筒の老舗「開化堂」の協力を得て、職人歴の長さによって異なる”集中の質"を検証しました。

中堅職人とベテラン職人を隔てるのは「脱力」した集中

実験に参加したのは、開化堂6代目で茶筒づくり経験数十年に及ぶベテラン職人の八木隆裕さん(以下八木さん)と、同じく開化堂で働く茶筒づくり経験約5年の中堅職人さん。JINS MEME OFFICEを利用して、茶筒づくりにおける、作業中の集中力を測定しました。また、実験中にはノイズ(突然話しかけたり、物音を発するなど)を意図的に発生させ、両者の集中力の変化も計測しました。

ノイズ(突然話しかけたり、物音を発するなど)によって、集中スコアが低下してしまった中堅職人さんに対して、ベテラン職人である八木さんはノイズによる影響を受けずに作業時間の経過とともに集中スコアが上昇していきました。

JINS MEME OFFICEを構成する「アタマ・ココロ・カラダ」3つのパラメータのうち、両者の間で最も大きな差が見られたのは、ココロ(リラックス)のスコア。ベテラン職人である八木さんは、終始リラックス状態を保ちながら集中していたのに対し、中堅職人さんは、アタマの数値は総じて高いものの、ココロ(リラックス)の数値が不安定な状態にありました。

親父(開化堂・5代目)に「肩の力を抜けたら一人前だ」と言われてきた。
そう言われていても、言われた本人はわからない。
集中力を可視化することは、職人にとってすごく有効だと思います。

ー開化堂6代目 八木隆裕

「深い集中」に入るためには、リラックスを伴う集中状態を作り出すことが必要であると言われています。「アタマで考えるよりも、いかに脱力するかが重要」と語るのは、実験中、常に深い集中状態を保っていたベテラン職人の八木さん。今回の実験で、JINS MEME OFFICEによって計測された数値は、「深い集中」状態で働くベテラン職人の"集中の質"の高さと、それを支えるココロの安定の重要性を解き明かすとともに、伝統的な ものづくりの の奥底に潜む職人の暗黙知をデータとして捉え得る、そんな可能性をも示唆した興味深い結果となりました。

開化堂の茶筒づくりについて

開化堂

京都「開化堂」は、1875年(明治8年)創業の日本で一番古い歴史をもつ手作り茶筒の老舗です。創業以来、一貫した手づくりで一世紀を過ぎた今もなお、百三十余もの細かい工程を経ながら、初代からの手法を守り続けています。 茶筒の材料を切るところからすべての工程を手作業で行い、ミリ単位の調整を経た茶筒は他の追随を許さない 高い精密さを誇ります。蓋を茶筒の口に合わせると手を触れずともすっと下に吸い込まれるように落ちて行くその感覚は、100年の伝統を伝承しつづける開化堂の職人精神そのものを体現していると言えます。