Lab.

バッティングの「質」を丸裸に。
JINS MEME MT EXPERIMENT バッティング編

カラダLAB. 2016.07.20

慶応義塾大学スポーツ医学研究センター准教授の橋本健史先生は、運動解析の専門家。歩行から跳躍まで人の体がどのように動き、そして何が原因で障害が起きていくか、それを予防するにはどうしたらいいかという研究を、主にモーションキャプチャシステムというものを使って行っている。モーションキャプチャーは正確なデータが取れるものの、非常に大きな装置が必要となる。小さくて常に身につけられ、一日中、行動を追うことができるJINS MEMEは、従来の大型装置の制約を解き放ち、運動解析の可能性をさらに押し広げるポテンシャルを秘めている。さらに身体の中心軸上にある頭部の動きをセンシングすることで、アスリート・トレーニングに大きな意味を持つ「動きの質」を可視化することもできる。今回はそのJINS MEMEの特性を活かして、野球の「バッティングの質」の解析を行ってもらった。

軸をブラさず状態の回転でヘッドスピードを加速させる

今回の解析では、横浜DeNAベイスターズに協力いただき、トスバッティングの映像とデータを編集したものです。実験に参加いただいた選手には10本ずつトスバッティングを打ってもらい、フォームと打球の結果を比較しました。

トスバッティングは飛んでくるボールのエネルギーが無い分、「打球の強さ=バッティングの強さ」と言えます。その際、伸びのある良い打球を打つためには、ボールにスウィングで作りだしたエネルギーをしっかりと伝えることが重要です。そのためには、体の軸をブラさずに、状態の回転によってバットのヘッドスピードを最大限に加速させるという行為が必要です。

JINS MEMEでは、加速度・ジャイロセンサーによって、踏み込みのタイミングやインパクトの瞬間のブレ、さらにはスウィング時の体の開きなどが計測できます。これらの情報を取得することによって、バッティングの弱点を可視化し、より良いフォームへと修正することができます。

前後・左右方向の加速度のブレが悪いフォームを生む

【悪いフォーム】

インパクトの瞬間に体がブレています。特にインパクトの直後、前方・左方向に頭部がブレているのがわかります。

これはJINS MEMEのデータでもはっきりと見てとることができます。Z(グレー色の線)は踏み込みの力=垂直方向の加速度を表しているので、グラフの変化が大きくてもいいですが、前後方向のX(青色の線)、左右方向のY(オレンジ色の線)の加速度については、なるべくグラフの変化が小さいほうが体のブレが少ないといえます。この映像のバッティングでは非常に大きく変化しており、これがバッティングの際の体のブレを表しているといます。

打球の行方も非常に打ち上げてしまって打球に勢いがありません。これが良くないフォームから良くない打球となったことの証拠になります。はっきりとグラフで、目で見てわかることが重要なのです。

頭が固定され、非常に鋭いインパクト

【良いフォーム】

インパクトの瞬間に頭がブレていません。頭部が残っているのでしっかりとボールを見つめて打っています。

良いフォームの左のグラフからわかるように、JINS MEMEで垂直方向の加速度Zだけは大きく変化していますが、その他の前後方向の加速度X、左右方向の加速度Yのグラフの変化は、非常に小さな値になっています。このことから、この選手は前後方向、左右方向にブレがなく、頭の位置が固定されて、非常に鋭いインパクトをしているということがわかります。さらに、加速度についてもこの良いフォームの場合には、ほとんど動きがありません。

良いフォームの打球を見てみると、非常に強く、するどい打球が遠くへ飛んでいるということがわかります。このように、JINS MEMEでは、その打球の良し悪し、バッティングの良し悪しをデータによって可視化することができます。

橋本健史(はしもと・たけし)

橋本健史(はしもと・たけし)

慶應義塾大学医学部 准教授。84年慶應義塾大学医学部卒業。86年国立東京第2病院(現国立病院機構東京医療センター)整形外科。94年・95年には日瑞基金派遣研究員としてのスウェーデン、カロリンスカ研究所留学。96年博士(医学)学位取得。慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター整形外科部長などを経て、2013年4月より現職。専門は足の外科を中心とした整形外科、靴の医学、スポーツ医学。