interview06 坂田 利弥

「生活空間に溶け込むJINS MEMEで予防医療を実現する」

JINS MEMEを使って何を研究していますか?

血液以外の生体液からDNA、タンパク質、糖、そしてイオンといった生体分子を測定する研究をしています。

例えば糖尿病の患者さんは、毎日採血をして血糖値を測定しています。血糖値の測定は、血液を採取して行うのが一般的ですが、日常的に行うのは非常に困難で、患者さんにとってかなりの負担になります。そこで私たちは、半導体を使って血液以外の生体液からのイオンを測定することで糖をセンシングする研究を行っています。

血液以外に外部に出ている体液は、汗・尿・唾・涙があります。その中で、涙以外の3つは、心理状態や外的環境によって、測定すべき成分が大きく影響を受けると言われていますが、涙は比較的その影響は受けず、生理状態を示すのに適していると考えています。涙の成分を日常生活の中で違和感なく測定するために、JINS MEMEは有用である、と考えています。

これまで、涙や唾液といった血液以外のものから糖を測定することに実験室レベルでは可能にしてきましたが、それを実用デバイスに落とし込むところで非常に苦労をしていました。具体的にセンサーを取り付けても、そこから取得するデータを送信するためには、無線通信を行う必要があり、電源も必要となります。JINS MEMEを使うことで、このボトルネックを解消できると考えたのです。

JINS MEMEの最大の魅力は、手軽に使えることです。JINS MEMEはかけるだけでデータの取得が可能なので、圧倒的に簡単です。そしてBluetooth LEによる無線通信や充電などの電源を持ち合わせています。これらは、センサーを開発する際に、最大のハードルとなる電源供給の問題点を解決できることを意味します。

現在、私たちが開発したセンサーと組み合わせ、JINS MEMEで糖をはじめとした様々な生体分子を計測する研究を行っています。

「眼から涙をセンシングすることで対処医療から予防医療へ」

JINS MEMEの可能性とは何ですか?

今まで、半導体センサーだけでは、データを無線でリアルタイムに取ることはできませんでした。それは、先ほどお話した、電源供給の問題やデータを飛ばすことが技術的に難しかったからです。しかし、JINS MEMEを使えば、それらの問題は解決されて、眼から涙で出てくる様々な生体分子の変化をリアルタイムに見られるようになります。これを使って、涙に含まれる成分、たとえば血糖値をリアルタイムに見られたらすごく面白いですよね。糖尿病の患者さんが血糖値を見るときに利用することはもちろんのこと、いわゆる糖尿病の予備軍の人たちにも利用してもらえるはずです。現在の血糖値の情報と目の前にある食べ物の情報を組み合わせることで、デザートを食べようとすると、「血糖値が許容量をオーバーします」といったアラートが出せるようになります。

今まで、お医者さんは、予備軍の人たちに対して、一般的な観点からしかアドバイスすることができませんでした。しかしながら、私たちの技術とJINS MEMEを組み合わせることで、個々人の血糖値の状態から食べていいものと悪いものを判別し、食事の管理を行うことができるようになるかもしれません。

将来的にJINS MEMEを着用することで糖尿病のような生活習慣病の予防ができる、そんな世界を作りたいと考えています。

坂田利弥(さかた・としや)

大阪大学大学院工学研究科/博士(工学)
専門分野はマテリアル科学
研究:遺伝子トランジスタ
2003年4月 独立行政法人 物質・材料研究機構 生体材料研究センター
2006年9月 東京大学ナノバイオ・インテグレーション研究拠点 特任講師
2011年4月 東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 准教授

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