interview03 稲見昌彦 × KAI KUNZE

「アイウエアで、人間の興味・関心を探る」

時代はBIG DATAからDEEP DATAへ。カラダの働きだけでなく、精神状態をも読み取るJINS MEMEの無限の可能性とは。

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(稲見)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で教えております、稲見昌彦と申します。バーチャルリアリティーやロボット工学の技術に基づきまして、人間の生活を豊かにしつつ、我々の能力が拡張したかのように感じることができる技術を研究しております。

眼球運動でどのくらいある部分を注視したかということと、もしくは眼球運動とそれに基づく頭部運動との関係性。パッと見て(眼球が)戻ってしまうものはあまり関心がないかもしれない。パッと見てから(眼球を)動かすと、それに関して注視しているかもしれない。そういった様々なデータを一緒に分析することによって、より詳しく分かると考えております。

(カイ・クンツェ:日本語訳)
"カイ・クンツェです。 JINS MEMEを使ったインタラクションと活動の認識についてご説明します。プロトタイプでは、まばたきと眼球の左右の動きを検知できました。この映像で、まばたきと左右の動きを検知できているのがわかりますね。とてもシンプルなゲームなんですが、まばたきでフラッピーバードをプレイできるんです。難しいですよ。もっと興味深いのが活動の認識です。ここではJINS MEMEを使って、読書時間を計測して読んだ文字数を数えます。動的な活動だけでなく、一日の読書量もトラッキングできるようになります。会話も認識できます。会話する時の目の動きを認識するのです。話すとまばたきの回数が増えますからね。また頭も会話すると独特な動き方をします。JINS MEMEの目と頭の動きの検知によって、会話しているかどうか簡単に認識できるのです。"

(稲見)
私が今までやってきた人体の拡張というのは、主に我々の入出力、つまりその感覚器とか、もしくはその行動をどう支援していくかというところに注目をしていました。それに対してJINS MEMEは2つの点で、全く今まで着目していてなかったことができると考えております。一つは、人が外に対して拡張していくというよりは、むしろ人の内面認識を拡張することができるかもしれない。人は自分のことを理解して、意識という感覚に基づいて世界を認識していると思われているんですが、その意識の部分、そしてまた意識できない部分というところはなかなか深く知ることができなかった。自分が知らない自分を知ることができる、という点がまず一つ大きな点。もう一つは、JINS MEMEをいろんな人がかけることによって、一人の個人の拡張ではなく、かけている人同士がつながり合った時に、今度はお互いのことより良く知ることもできるかもしれない。人と人をつなげることも拡張できる。内面の拡張とつながりの拡張、この2点に非常に興味を覚えました。

今後は、人工知能が発達していくと、人が何もすることがなくなって、機械によって置き換えられてしまうんじゃないかと、そういう話もよく言われるんですが、私はちょっと違うと思っているんです。実はチェスでも、今一番強いのは、コンピュータでも人でもなくて、コンピュータと人が人機一体となって戦った時だと。advanced chessと呼ばれているんですが、そういう話があるんですよ。今後もしかすると、コンピュータがいかに進歩したとしても、それに全部やってもらうということではなくて、実際はこういうデバイスを通して、人機一体を実現し、コンピュータよりも人よりも素晴らしい、新しい超人というのかもしれませんが、そういう形でもっといろんな方々が関わっていく。それがもしかすると未来の姿かもしれないと思っております。

※ インタビュー内の肩書及び組織名は、取材当時のものです。

稲見昌彦(いなみ・まさひこ)

東京大学大学院情報理工学系研究科 教授。99年東京大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。東京大学助手、電気通信大学教授、MITコンピュータ科学・人工知能研究所客員科学者、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授等を経て2015年11月より現職。ロボット工学、バーチャルリアリティ等インタラクティブ技術に関する研究に従事。米TIME誌Coolest Invention of the Year、文部科学大臣表彰若手科学者賞など多数の受賞。

Kai Kunze(カイ・クンツェ)

ドイツのパッサウ大学より最優秀の成績で博士号を取得。パロアルト研究所(PARC)、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ、Sun Labs Europe、ドイツ証券取引所などにおける客員研究およびインターンシップ、大阪府立大学特任助教を経て、現在は慶應義塾大学大学院(横浜)メディアデザイン研究科特任准教授。主な研究対象は、認知活動のトラッキング、cognition-awareコンピューティング、スマートアイウェア、人の意識の拡張。UbiComp、PERCOM、ICDARなどの学会において数々の論文・デモンストレーションで最優秀賞を受賞・ノミネート。超人スポーツ委員会会員。

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